DNAの電気泳動の手順
アガロースゲル電気泳動 (Agarose Gel Electrophoresis)
アガロースゲル電気泳動は、アガロースゲルの網目構造に電流を用いてDNAやRNAなどの高分子を流しこみ、分離する手法です。
一般的にはアガロースゲルによるDNAの電気泳動ではおよそ0.1~20 kbp (base pair) のDNAを分離することができます。より大きい塩基数のDNAの電気泳動には特殊なアガロースを利用し、より小さい塩基数のDNAの電気泳動にはポリアクリルアミドゲルを利用します。適正分離範囲はアガロースごとに製品説明書を参照します。
準備する試薬
<アガロースゲル>
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Agarose, 1×TAEまたは0.5×TBE
アガロースは製品ごとにDNAの分離範囲が異なるため、適切なゲル濃度や分離範囲については各供給元による情報を参照すること。
<泳動バッファー>
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1×TAE:40 mM Tris(hydroxymethyl)aminomethane, 20 mM Acetic acid, 1 mM EDTA・2Na
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0.5×TBE:44 mM Tris(hydroxymethyl)aminomethane, 44 mM Boric acid, 1 mM EDTA・2Na
TAE Bufferは12 kbpより大きいDNA確認に適している。
TBE Bufferは1 kbpより小さいDNA確認に適している。
1kbp-12kbpのDNAの確認ではどちらのバッファーにおいても大差ない。
DNAをゲルから抽出する場合はTAEが適している。
TBE BufferはTAE Bufferと比較して泳動速度が速い。
<染色剤>
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1.0 mg/mL Ethidium bromide
臭化エチジウムは生物に対して変異原性が疑われているため、SDS(Safety Data Sheet)をよく読み、取り扱いは慎重に行うこと。
<6×Loading Dye>
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36 mM EDTA・2Na, 40% (v/v) Glycerol, 0.025% (w/v) Bromphenol Blue, 10 mM Tris-HCl (pH8.0)
40% (v/v) Glycerolを15% (v/v) Ficollで代用するとバンドをシャープにする効果があるといわれている。
0.48% (w/v, 6×) SDSの追加によってDNA-タンパク質間相互作用を阻害でき、酵素反応溶液等の泳動時に有用。
泳動先端付近を可視化できる0.4% Orange G (w/v, 6×), 高bpを可視化する0.025% Xylene cyanol (w/v, 6×)を追加することもできる。
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必要な器具
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三角フラスコ
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電子レンジ (実験専用)、またはオートクレーブ
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ゲル作成トレイ・コーム
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ゲル保管用プラスチック容器
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電気泳動層・パワーサプライ
試薬の調製
手順
アガロースゲルの作製
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液量の5倍容量の三角フラスコに1×TAE、または0.5×TBEとアガロースを入れる(%(w/v)で調製する, 例:1% = 1g/100mL)
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蓋をせずに電子レンジで加熱し、アガロースを溶かす (オートクレーブでも可)
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ゲル化しないある程度の温度に冷えたらゲル作成トレイにゲル溶液を注ぐ
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コームを挿し込む
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ゲルが冷えて固まるまで静置する
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コームを外す
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保管する場合はゲル作成に使用したバッファーで満たした容器にいれ、4℃で保管する
電子レンジは実験専用とし、ヒュームフード内で使用する。
電子レンジ加熱時は突沸に注意し、こまめに三角フラスコを取り出し、撹拌する。
アガロースの気泡は≒100%エタノールスプレーの吹き付けると簡単に除去できる。
アガロースを厚く作りすぎるとバックグラウンドが高くなるので注意する。
アガロースが溶けにくい場合は、冷却したバッファーを撹拌しながらアガロースを入れ、水和するまで撹拌した後、手順2を行う。
先染めする場合は手順3時点、また、保管容器に臭化エチジウム(final 0.5 μg/mL)を添加する。泳動時、泳動バッファーにも添加が必要なことに注意する。
試料の調製・電気泳動
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分析するDNA溶液と 6×ローディングダイを5:1で混合する
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泳動槽にアガロースゲルをいれ、1×TAE, または0.5×TBEをゲル上5 mm程度まで入れる
※ゲル作成に使用したバッファーを用いる -
ウェルにDNAマーカーとサンプルをロードし、100 Vで泳動する
ロードするDNA量は1バンドあたり50 ngを目安とする。入れすぎると泳動バンドが乱れる。
電圧の設定は電極間の距離に対して4-10 V/cm に設定する。
電極から発生する気泡により、バッファー成分が容易に空気中に放出されるため、電気泳動はヒュームフード内で行ったほうがよい。
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染色・脱色
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50 mLの超純水に1.0 mg/mL 臭化エチジウム溶液を25 uLいれ、染色液を調製する
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染色液にゲルを入れ、20分間振とうする
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超純水にゲルを入れ、10分間振とうする(脱色)
1.0 mg/mL 臭化エチジウム溶液を2,000倍に希釈し、約0.5 μg/mL 臭化エチジウム溶液で使用する。
脱色を行うことによりバックグラウンドが低下するが、不要な場合は省略することもできる。
検出
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UVトランスイルミネーターによりバンドを確認する
臭化エチジウムは300 nmが極大励起波長。280-350 nm、500-550 nmで励起可能。
UVを使用する場合は目の保護具をつけること。
…実験お役立ち情報…
実験に役⽴つTIPSや基本情報をご提供します